流通ジャーナリスト金子哲雄の食いだおれ日記 -4ページ目

渋谷・焼鳥 森本

森本 夕方、渋谷の井の頭線ホーム下を通過すると立ち寄りたくなる焼鳥店があります。お世話になっている方から、ご案内頂き、以来、店の前を通り、鳥が焼けるにおいが漂ってくると、素通りすることができず、縄のれんをくぐってしまいます。ちょうど、渋谷では祭りが開催され、おみこしが路地を通過します。わっしょいの掛け声が、ちょうどBGMのようになり、なかなか風情がありました。ダイエット中ですが、鶏肉は低カロリーなので、軽く食べることにしました。名物のつくねに加え、鶏の生レバーは、鮮度が高い鳥を仕入れられるが故に提供できるメニューです。カウンターのみで30人も入れば満席になる店は、開店から閉店まで途切れることはありません。カウンターの中では約6名のスタッフはチームワークよく動いています。何よりも、お客の目の前で、おやじさんが、手早くさばき、串にさし、焼かれる様子は、プロの技であり、調理技術を「目」でも堪能できます。チェーンの居酒屋さんなどでは、セントラルキッチン(工場)で調理された食品を店舗においてレンジアップするだけという店もありますが、個人経営の焼き鳥店では、まさにライブクック。料理を見せることも、味のうちです。外食の産業化が進み、都心部の家賃が高騰したこともあり、昔ながらの人情味あふれる店舗は減少してきています。そう、人情も味のうちなんですね。親方が一食入魂の姿はスパイスになります。経営効率の追求と人情味を感じられる距離感のバランス感が、商売を面白くするか否かの鍵になるのではないでしょうか。


「調理シーンを目で堪能できる店は繁盛している」


渋谷・森本にて感じました。


・住所 渋谷区道玄坂2-7-4 浜之上ビル1F 

・電話 03-3464-5233
・営業時間/16:30~22:00 ・ラストオーダー/21:40 

・定休日/日祝日・夏季冬季 (営業時間 要確認)

http://www.shibuyadogenzaka.com/morimoto/main.html

梅田・龍ノ巣

龍ノ巣 鶴橋を筆頭に、焼肉激戦区を有する大阪で、諸先輩方から、「梅田に行ったら、必ず寄ったほうがいい」と言われているホルモン焼き屋さん「龍ノ巣」を訪ねました。当然、店内は油が飛んでいますが、カバンや服にはビニールをかぶせてくれ、匂いがつかないようにしてくれます。焼肉屋ではなく、ホルモン焼屋というのがポイントです。いわゆる肉の赤身は一切取り扱わず、ホルモン、ミノ、ハート(牛の心臓)など、内臓だけに絞り込んでいます。そのかわり、食べさせ方は網焼き、モツ鍋といったようにバリエーションを持たせ、内臓のおいしさを堪能できます。ホルモンが焼きあがるまでの3分から5分の間は最も楽しく、醍醐味の一つです。内臓は赤身以上に新鮮でなければ食べられないそうです。赤身を取り扱わず、内臓で勝負するところが潔いですね。メニューには十勝産牛肉を「独自ルート」で仕入れたと書かれています。独自ルートなんて言われると「特別においしいものを仕入れられるのでは」と期待させます。やっとのことで焼き上がり、ホルモンを口に運ぶと、その食感はクリーミーでかつ、意無駄な脂が網を通して落ちているので、あっさりしており、いくらでも食べ続けられます。一人前、380円、飲んで食べて、2500円くらいで、お腹いっぱいになります。競争が激しいマーケットでは、なんでもある店は意外と印象に残りません。ホルモンだけにアイテムを絞り、食べさせ方にバリエーションを持たせることで、深い味わいを提供する。「絞り込み」、自分も見習わなければと再認識させられました。


「競争が激しい市場では、一番になるまでセグメントする」


ホルモン焼店で感じました。


・龍ノ巣 大阪市北区堂山町2-16 五孝ビル1F

大阪東急インそば、阪急東通り経由で徒歩8分ほど。

営業時間 18時~翌日午前8時 電話 06-6361-8338

定休日なし 場所は電話にて確認


白金・焼肉ジャンボ

ジャンボ お世話になっている方といっしょに白金にある焼肉店ジャンボを訪ねました。皿に載った肉はつやがあり、口に入れる前からとろけるような食感が期待できそうな表情なんですね。もう、見ているだけで「うまそう~」と、声を大にして叫びたくなる赤身と脂身のバランスです。レギュラーメニューの他、仕入ることができた部位を提供する「裏メニュー」があります。「今日はどんな部位が入荷しているのか」、お肉好きにとっては、わくわく、どきどきさせてくれます。ジャンボは決して立地のよい場所にあるわけではありません。地下鉄の駅から徒歩7分以上歩き、パーキングもありません。レストランはどこまでいっても、味がおいしくなければいけません。以前、味は主観的なものだから、味に頼っている外食は産業ではなく、生業だとバカにする識者の方がいらっしゃいました。誰がなんと言おうと、うまくない外食なんて、好きではありません。元気な時は、食べられることは当たり前なので意識したことはありませんが、体調を崩し、食べたくても食べられない時、改めて「食べられること」のありがたみを感じます。だからこそ、一食一食を大切にしたいと思うので、作り手の思い入れのこもったものを食べたいと思っています。焼肉やラーメンのように嗜好性が強い商品には、愛好家が存在し、彼らがオピニオンリーダーとなり、ブログや掲示板などを通じ、情報を発信してくれます。のれん分けした名店の場合、必ずしも好立地ではなくても、むしろ分かりづらい場所の方が通好みとなり、噂が広がりやすい例も見られます。


「嗜好性の高い商品は立地悪でも集客できる」


白金ジャンボで感じました。


・白金ジャンボ 〒108-0072 東京都港区白金3-1-1第一麻布ビル1F

東京メトロ南北線 白金高輪A4出口から徒歩10分~12分

営業時間:17:00~24:00(年中無休) 電話03-5795-4129 FAX.03-5795-4140


http://yakiniku-jambo.com/


最後にオムライスを召し上がりますことをおすすめします!

東京・秋葉原 まぐろ亭

まぐろ亭 秋葉原の総武線ガード下にある「まぐろ亭」という、マグロ料理専門店に出かけました。コンセプトをそのままズバリ店名にした同店は午後1時を過ぎても、行列が10人ほど続いています。店内に入ってわかったのですが、座席数がカウンターを含めて12~15しかないので、秋葉原のランチ需要を考えると、当然、行列ができます。しかし、お客様からすると、行列を見かけると「おいしいに違いない」と思い、時間があれば、その列に加わりたくなるものです。さて、カウンターに座り、昼の部で一番人気「中トロ丼」(1000円)を注文、すると2分もしないうちに「ハイヨ」と出されたのは、どんぶりから、はみ出すマグロが12切れですよ。赤身が9切れ、トロが3切れ、ランチで1000円は高いかなぁ~という思いを、吹っ飛ばすボリューム感です。店のつくりはガード下にあり、お世辞にも「きれい」とは言いがたいです。しかし、店をきれいにするよりも、座席を増やすよりも、「お客様に廉価でマグロを召し上がって頂きたい」という店主の気持ちが伝わってくるものでした。はみ出したマグロのおかげで、カウンターにドンと置かれた時の感激を誰かに伝えたくなり、お客が勝手に宣伝してくれるわけです。実際、自分もブログで紹介しているわけですから。噂になるためには、顧客の予想をはるかに超える商品・サービスを提供すればいいのだなということを理解しました。店構えが貧相なだけに、はみ出しマグロ丼のボリューム感は「まさか」の衝撃でした。ネタの置き方で感動を増幅する、う~ん、仕掛がうまいですね。

「予想を超えることを提供すると噂になる」

まぐろ亭で感じました。


・まぐろ亭 千代田区外神田2-1-16 電話03-5295-3338 無休

地図 http://www.mapfan.com/m.cgi?MAP=E139.46.19.1N35.41.43.7&ZM=11

石丸電気本店の裏側 総武線のガード下 


京都三条・名代とんかう「かつくら」

かつくら 関東で暮らしているせいか、京風○○という文字を見ると、ついつい立ち寄りたくなります。せっかく、京都に来たのだから京都風にアレンジされた料理、スイーツなどを食べたいものです。今から20年以上前でしょうか。京都駅構内にある立ち食いそば店にて、にしんそばを食べた際、関東とは異なる、透き通った茶色のだしをすすりながら「ああ、関西に来たな」と旅情に浸っていました。さらに、京都三条、四条といった京らしい地名が屋号につくと「京の都」にやってきた感があり、うれしくなります。さて、京都に行くと必ず食べたくなるのが名代とんかつ「かつくら」です。さくっと、あがった京風ロースとんかつは、あっさりとした食感でありながらコクがあり、パクパク食べても、胃がもたれません。なんだか、食べ過ぎの言い訳をしているようですが‥‥。玄米入りのご飯、キャベツ、お漬物(もちろん京風)も、もちろん食べ放題です。席につくと、白ゴマの入ったすり鉢が出され、お客はゴリゴリゴマを擦りながら、ワクワクしながら、とんかつが揚がるのを待ちます。木を多用したインテリアも、和風テイストで京都らしさを演出し、料理をおいしくしてくれます。横浜、神戸、大阪、京都、観光客を呼び込む力のある都市では、その町のイメージにマッチしたメニューを開発しています。神戸コロッケのように、名詞の前に都市名をつけると、ハイカラなイメージをかもし出すことができます。昨今、各地において特産品開発を行っていますが、その町の歴史的背景とマッチすると、こじつけ感がなくなると思うのですが。


「ご当地メニューの創造は集客力を高める」


京都三条かつくらで感じました。


・かつくら四条木屋町店(阪急河原町駅から徒歩5分)

京都市下京区西木屋町四条上ル

電話075-221-1468 定休日なし

営業時間 午前11時~午後10時30分 ラストオーダー午後10時


http://www.fukunaga-tf.com/katsukura/main.html